イランという国(05)お金持ちの家(1)

イランという国

お金持ちの家を拝見すればその時代、その国の人々が素晴らしいものと考えていたものが分かるというものです。カシャーンの町には、バラ水と絨毯以外にはこれといった産業はないのですが、約150年前に大金持ちの家族が二つあったそうです。当時の首都はテヘランですが、カシャーンまでは約230km程度離れています。

今回はそのうちの一つである「ボルジェルディー家」をご紹介いたしましょう。ボルジェルディー氏は商人で巨万の富を成したそうです。さすがにペルシャ商人ですね。カシャーンにある家は19世紀前半に立てられた私邸ですが、家というよりも宮殿のようです。現在は博物館として一般に公開されています。

商人と言っても、やっていたことは今日の商社のようなことだと思います。西洋と東洋の商品を扱って貿易を行っていたのでしょう。壁画にはフランスの兵隊や洋式の衣装を着たものが飾られていました。猪の狩の様子や阿片でくつろいでいる絵もありました。

ガジャール朝の王様が訪問したのでしょう、肖像画が客間に当たる部屋に壁画にされていました。地方豪族としては、大きな名誉と考え、誇りにしたのでしょうね。凝りに凝った天井の写真をアップしておきました。モスク以外でこれほど凝った建築物は少ないと思います。

写真の中で通風口のような塔に見えるものは、バードギールという外気を取り込んで室内に冷たい空気を送るシステムの空気取り入れ口です。高いところから空気を取り入れるせいでしょうか、ひんやりした空気が入って来ていました。

最後の写真は、この家の正門の扉です。ノックする金具の形が男性用、女性用と別々になっています。形だけでなく、男性用のものは太く低い音、女性用のものは高い音が出ます。これなら奥からでも判別できるというものです。

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