海外旅行こぼれ話(08)マレイシアのホタル

海外旅行こぼれ話

クアラ・クワンタン、クアラ・ルンプールから2時間ほど北上したところに、蛍を観察できる場所があります。

ボート乗り場は暗いので、行き先はまったく見えませんが、ボートに乗るときに川の水の色は見えました。それはお世辞にも綺麗とは言えない黄土色ですけど、それは粘土質の表土が溶け込んだもので人工的な汚染によるものではありません。

ボートには4人乗りでエンジンはありません。蛍の保護のためでしょう。船頭が長い櫂を使ってボートを操ります。浅瀬では川底を突付き、深くなると日本の舟のように櫂を扱っています。ボートは音も立てずに上流に向かいました。

周囲はマングローブ林のようです。星空以外は真っ暗なのでよく見えません。人家の明かりすらありません。やがて目が闇に慣れてくると、不思議な光景が目に入って来ました。マングローブ林の中でボヤーっと光っている木が見えて来たのです。

接近するとそれは電飾されたクリスマス・ツリーのようにも見えました。同行のマレイシア人によると、蛍は特定の木だけにつくということでした。船頭はいくつかあるうちの一つのクリスマス・ツリーに接近しました。ほとんどボート全体が木の枝の下に入ってしまうほど接近してくれたのです。

そこに見えたのはまるで宇宙です。点滅の周期が早く、動きも機敏なマレイシア蛍が頭上に無数に見えるのです。星が星を追いかけているようにも見えます。私がそっと手を差し出すと、そこに小さくてまったく質量を感じさせない蛍がとまりました。

体の大きさは2mmくらいです。とにかく小さく、そしてその体に似合わずとても明るいのです。まるで手の平全体を照らしているようにも思えるくらいの明るさをもっていました。光は少し黄緑色をしているように感じられました。

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