禁酒国イランでの話です、到着の翌日から早速アルコール飲料を探すことにしました。ブラックマーケットが存在することは確信していましたから、問題は誰と接触すれば首尾よくアルコール飲料が手に入るかということです。見知らぬ人がブラックマーケットの紹介をしてくれるとも思えないし、本当にアルコールを飲まない人もいます。
案の定、ホテルの従業員などに聞いても完全にシラを切られてしまいました。いろいろ考えた結果、ターゲットにしたのがタクシーの運転手です。5つ星ホテルの前に止まっているタクシーの運転手は、外国人観光客を相手にするのでなんとか英語が話せるものです。私は近くにあるホーマー・ホテルまで歩いて行って、タクシーに乗り込みました。
タクシーの運転手は、行き先を言わずにアルコールはないかと聞く私に戸惑っていましたが、やがて心当たりがあるらしく携帯電話で連絡を取り始めました。もちろん私は運転手に相応の謝礼をすると言いました。この運転手は飲酒をしない人だったかも知れませんが、自宅に寄って手配を完了させて、再び車を走らせました。
どこに連れて行かれるか分からない私は少しスリルを感じていました。タクシーはやがて住宅地に入り公園の脇に停車しました。そこでしばらく待っているとジャンパー姿の男が黒いビニール袋を手にして現れました。そのビニール袋の中には、350mlの缶入りのウォッカが4個入っていました。
こうして私は到着した翌日に首尾よくアルコール飲料を手に入れることができたのです。
アパートに帰った時にはもう夕方でした。早速ウォッカを飲み始めました。その味は、はっきり言ってかなり不味いものでした。そのままではとても飲めた代物ではありません。アルコール度数は50度くらいあるように感じました。不味いとは言え、呑兵衛ですからいろいろ考えます。仕方なくコカコーラで割って飲むことにしました。コカコーラで割っても不味い味は消えませんが、飲めないことはないという感じです。
私には缶入りのものはすべて飲むものだという先入観があったのでしょう、ともあれ全部飲んでしまいました。お陰でひどい二日酔いになってしまいました。
後で考えてみたら、350mlのウォッカをすべて飲むというのは、ウイスキーで換算してボトルの3分の2くらいを飲んでしまったということになります。質の悪いウォッカでその量ですから、ひどい二日酔いになって当然な訳です。
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