イランという国(92)アパート探し

イランという国

イランに派遣されて当座は長期滞在者用ホテルを利用していましたが、少なくとも2年間を過ごすことになるので本物のアパートを探すことにしました。日本人に紹介されたアパートを見て回りましたが、どれも満足できず、案内用に用意された車を降りて、自分で不動産事務所に入って行きました。

場所はエラヒエという高級住宅地です。不動産事務所にはお客さんは一人いただけですが、何やら賑やかに話をしていました。もちろん全員イラン人でした。私はペルシャ語はできませんから、英語を話せる人がいないかと訊いてみました。現地でどのくらい英語が通じるのかという興味もありました。

イランでは大抵誰かが英語を話します。たまに日本語を話す人に遭遇することもあります。日本語を話す人は日本に不法滞在した経験の持ち主であることが普通です。日本語を話すイラン人は日本の物価、日本人の収入を知っているので、その人を雇おうとすると高額を吹っかけてきます。要注意です。

ともあれ、不動産事務所で話をすると、いい候補があるからこれから見に行こうというのです。話が早いのは大歓迎です。雪の積もる歩道を歩いてその候補のアパートに向かいました。10分くらい歩くと大きなアパートが見えてきました。まだ新しい建物でした。

案内されたアパートには丁度大家さんの奥様がいました。インテリア・デザインが好きだということでした。幸いにこの奥様、英語が達者でした。残念ながら、部屋の中はまだ内装工事中で、床と壁ができているだけという状態です。これから、カーテンや照明を設置するということでした。

家賃を聞くと、私の派遣先から支払われる上限よりも高いものでした。交渉である程度は値下げできるでしょうが、景色のいい広々とした部屋は魅力でした。禁酒国で娯楽のないイラン国での滞在ですから、アパートで過ごす時間は長くなるだろうと考えると、より快適な生活のために多少の持ち出しは仕方がないだろうと考えたものです。

私は単身赴任ですから、大家さんも大歓迎でした。実は大家さんたち、子供たちが成長したので自分たちで住もうとアパートを購入したのだそうです。ですから、子連れの家族、あるいはペットを持った借家人などではアパートが傷むということを心配してたのです。そういう事情ですから、私は値引き交渉ができると考えた訳です。

アパートの内装などは大家さんの奥様が担当していましたが、契約となるとご主人と話をしないことには始まりません。大家さんの自宅の住所をもらい契約について話をしに行くことにしました。

大家さんの家は、西洋風の豪邸です。イラン人のお金持ちの生活の様子を垣間見ることができました。私はまだよくイラン人の生活の実態について知らなかったので、大家さんのライフスタイルはとても意外でした。まるでヨーロッパの国にいるような感じなのです。

ご主人は大変温厚な人物で、この人なら信用できそうだと直感しました。自動車部品を輸入して販売している会社の社長さんです。英語は米国仕込みのものでした。アパートの家賃は私の目論見どおり、値切り交渉はうまく成功しました。

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