(注)写真はカスピ海でとれるキャビアのカナッペです。
イスラム教徒の食べないものではありません、イラン人の食べないものということです。私の知りうる限りでは、イラン人が食べないものが、すべてのイスラム教徒が食べられないものとは限らないと思うからです。私はイスラム教スンニ派のマレイシアにいたことがありますが、ハラーム(不浄)、ハラール(浄)の区別はあってもそれほど食べ物の種類にはこだわりがなかったように記憶しています。
豚肉は不浄とされているためどのイスラム教徒も口にしません。マレイシアではイスラム教徒のマレー人はまず中国料理のレストランには入りません。イランなどではそもそも豚肉が身近に存在していないので食べようとしても手に入らないのが現実です。豚肉を絶対に食べないかということはちょっとこの際別にしておきますね。いずれ触れることがあるでしょう。
イラン人はイスラム教シーア派です。ですから多数派のスンニ派とは違った戒律があるようです。イランでは何年かに発行される戒律集みたいなものがあって、そこに細かく規定が書かれているそうです。その本にはお祈り、断食、食事、寄進、喜捨、衣服などについて触れられていると言います。
一般に草食の哺乳類以外は食べてはいけないようです。鋭い爪のある動物がダメだと言います。イノシシは野生の豚のようなものですから、食べてもよさそうなものですけどね。まぁ、豚は昔から汚い動物としてみなされていたし、よく火を通さないといけないので、極力食用を避けるという意味だったのでしょう。
動物についてはそれが食用に適していても、殺し方が重要で、日本人が食べているようなものはハラーム(不浄)とされ食べてはいけません。ハラールと呼ばれるためには、頚動脈を一瞬にして断つというように動物に苦しみを与えない殺し方に限定されます。中東ではすべてこのように処理されているので、ハラールという表現は滅多に聞きません。
魚類については面白い解釈があって、鱗のないものは食してはならないようです。ところがカスピ海に棲んでいるチョウザメなどは昔から食べているものです。近年チョウザメに鱗が発見されたということで例外ではなくなったという話を聞いたことがあります。ナマズには鱗がなさそうですから、これは食べてはいけないものなのでしょう。
面白いことは海老は食べてもいいようですが、蟹はダメなんだそうです。ほとんど差がないように思えますが、食べられる蟹は身近にいないので問題はないのでしょう。蛸と烏賊(イカ)は論外のようです。蛸は世界中で悪魔の魚として扱われているのでイランに限ったことではありませんけどね。烏賊がダメだというのはイランだけかも知れません。
シーフードでは貝類も食べてはいけないようです。イランの鮮魚店では貝類を見たことがありません。カタツムリも食べないでしょうね。それから食べてもいいけど嫌いというものが海の魚です。イラン人は海の臭いが嫌いなので一部の人しか食べないようです。カスピ海で獲れる魚は淡水魚のようなものですから、日本人と反対にこちらには抵抗がないようです。
野菜、果物、木の実には制限はないようです。飲み物ではアルコール飲料が完全にダメで、阿片などの麻薬も禁止されています。正常な精神状態でなくようなものは好ましくないというのが禁止の理由のようです。煙草は禁止されていません。ただし、ラマダン(断食)の期間は喫煙も禁止されます。
以上、現在の状況についてお話しましたが、イランではイスラム革命以前はかなり制限が緩かったようです。パーフレビ王朝の時代には米国と蜜月関係にあり、街にはナイトクラブ、ディスコがあったと言います。
日本人がイランで生活して困るのは、豚肉、新鮮なシーフードとアルコールでしょうか。この3点にこだわらなければそれほど不自由な生活だと思わないで過ごすことができるでしょう。
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